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国内パンデミック映画「感染列島」院内感染・医療崩壊・交通規制・パニックを描く

                                                                                
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 2009 年 東宝映画「感染列島」

キャスト
妻夫木聡 / 檀 れい
国仲涼子 / 田中裕二(爆笑問題) / 池脇千鶴 / カンニング竹山
金田明夫 / 光石 研 / キムラ緑子 / 嶋田久作 / 正名僕蔵 / ダンテ・カーヴァー
馬渕英俚可 / 小松彩夏 / 三浦アキフミ / 夏緒 / 太賀
佐藤浩市(友情出演)
藤 竜也
スタッフ
製作=平野 隆
企画=下田淳行
 音楽=安川午朗
主題歌=レミオロメン
 撮影=斉藤幸一
 脚本/監督 = 瀬々敬久

 

 

あらすじ ネタバレ

 

 

フィリピンのある町で新型インフルエンザと思われる感染症が流行していました。防護服をまとった担当者らが、住民ををヘリで運んでいます。市場でも鶏を販売する男が咳き込んでいました。あたりは無数の鶏の死骸が…。

ほどなくして、東京都いずみ野市立病院に、真鍋という男性患者が妻の麻美(池脇千鶴)とやってきます。診察した松岡(妻夫木聡)は「風邪と思います2・3日安静にしてください」と言って帰します。

おりしも、近くの養鶏場で鳥インフルエンザが発生。

翌日、昨日の真鍋秀俊が容体が悪化して再び運ばれてきます。吐血をし、目や鼻からも出血しています。対応した救急救命医の安藤(佐藤浩市)は、患者の血液を浴びてしまいます。患者の真鍋が死亡。妻の麻美も感染します。安藤は「新型インフルエンザだと断定し院内感染の恐れもある、として病院の封鎖を指示。、安藤は「院内感染を防げ」と指示します。

一方、時すでに遅し日本各地でも、吐血する人が増え、感染が広がっていました。

厚生省からは「フィリピンで発生した鳥インフルエンザから変異した新型インフルエンザが流行し、このまま進むと25000人が感染する」と発表。更に「感染拡大を防止するため、東京いずみ野市を封鎖する」と宣言。

いずみ野市で養鶏業を営んでいた神倉(光石研)が鳥インフルエンザ発生の感染源と疑われます。そのため神倉の娘の茜(夏緒)が学校でいじめられ始めます。

 

一方いずみ野市立病院ではWHOから派遣された小川栄子(壇れい)が院内の指揮を執るようになります。

栄子は「この病院を隔離病院にする」助手に大学時代からの知り合い松岡を指名。という一方的なやり方に、最初は院長や看護師長の池畑(キムラ緑子)らが病院職員全員が大反対します。そのころ、時待たずして患者の血液から感染していた救急救命医の安藤が亡くなります。

そのころ、感染元とされる養鶏場に仁志(藤竜也)という医学博士が調査に向かっていた。松岡も同乗します。調査の結果「この養鶏場は素晴らしいほど管理されている、ここが原因とは思えない」と仁志は判断。その時、防護服を着た怪しい男を松岡が見つけ、後を追います。男はフリーのウィルス研究家の鈴木(カンニング竹山)。正式な医療関係者とはみなされておらず検体が確保できないので、ここに来た。あれは新型インフルエンザなんかじゃない。オレに検体を回してくれ、調べたい」と言って名刺だけ渡して立ち去ります。

一方病院では、栄子は「ウイルス専任スタッフを決める」と言い、病院のスタッフが集められました。栄子は全員の前で、病院から出られないこと、自らも感染リスクを背負うことなど、説明した後「スタッフは任意にします。皆さん協力してください、お願いします」と言ってみなに頭を下げます。この光景に、看護師の三田(国仲涼子)が手をあげると、池畑も他の医師たちも次々に手を挙げ、ウイルス治療スタッフが決まります。

そのころウィルスは日本中に拡散し、一人目の感染者である真鍋秀俊から20日経過した時点で感染者数4000人、死者数2000人となります。政府は緊急事態宣言を出し、移動が出来なくなった市民は、パニックとなり、スーパーでは買占めが横行していました。

 

そんな最中養鶏場の神倉が鳥インフルエンザ流行の犯人という世間の冷酷な視線に耐えがたくなり首つり自殺しました。発見したのは娘の茜でした。

ほどなく、WHOは新型ウィルスを『ブレイム』(神の罰)と命名し、鳥インフルとは全く別の新型ウイルスと発表。

ちょうど時を同じくして厚労省は「今回のウィルスは鳥インフルエンザじゃない。いずみ野市の養鶏場が感染源ではない」と発表します。

そして自殺した神倉養鶏場の娘の茜は、政府に対して「人殺し」と叫びます。

。松岡は栄子を連れ、第一感染者の妻の麻美に会いに行きます。麻美は松岡に無礼を謝り「正月に、東南アジアで医師をしている父が帰って来て、咳き込んですぐ帰った。父が感染源ではないかと思う」と話します。麻美の父の立花修治(嶋田久作)は、麻美の部屋を出た後、駅で吐血し感染を広げていました。

一方、病院では、感染患者が増え続け、人工呼吸器が不足し始めます。そこで栄子が「重篤患者の人工呼吸器を外し、助かる見込みのある患者に取りつけて」と、重篤患者を見殺しにしたことで、専従スタッフが次々辞めていきました。一人で泣く栄子を松岡が抱きしめます。

松岡は、鈴木に検体を渡し、仁志教授と一緒に立花修治が医師をしていた東南アジアのマングローブの島に渡ります。そこではエビの養殖が盛んに行われていました。「若い女性が風邪の症状でやってきた」と言う立花修治のメモを見つけた松岡と仁志は、立花修治の足取りを追い、養殖場のある島に向います。すると多くの死体と、隔離された感染者を見つけます。

松岡は検体を持って日本に帰りました。仁志は「自分はガンを患っている」と言って島に残ります。そして仁志は、「養殖場の男が、ジャングルから帰って来て吐血して死んだ。その後、政府が事実を隠すために感染者を隔離し、村を焼き払った」という話を聞き、ジャングルの中の洞窟で、感染源である多数のコウモリの死骸を見つけます。

 

鈴木らの研究チームが新型ウィルスを発見し、今後ワクチンを作る研究に入るとテレビで発表します。そのころ、仁志は現地で死亡しました。真鍋秀俊の発症から50日で、感染者250万人、死者90万人となりました。

栄子が次の地区へ行くため、病院を離れる日が来ます。松岡は「以前のように平穏な日に戻ったら栄子に会いに行く」と言って別れを告げます。帰りの車で栄子は吐血し、感染したことを知ります。そして向かった先では「私は感染しています。重篤患者の面倒をみます」と言って死の道を選びます。

病院では専従スタッフの看護師の三田が感染し、死亡しました。そして自殺した神倉養鶏場の娘の茜も感染して運ばれます。

感染者1000万人、死者300万人になった頃、栄子の容体が悪化します。そして、「回復した患者の血清を打つ人体実験に自分を使ってくれ」と頼み、松岡に知らせます。それを聞いた松岡は、麻美に会いに行き、麻美の血清を茜に打ちます。茜の容体が回復し、死の淵から蘇りました。安心した松岡は栄子の病院へ車を飛ばします。

松岡が着いた時、栄子は心肺停止状態でした。松岡の必死の蘇生で一旦回復し「この顔が好きだった」と松岡に言った後、息を引き取りました。松岡は外で泣きながら、学生時代に栄子と出会い、一緒にいた時間の事を思い出します。

7月、感染者4000万人、死者1000万人をピークに、ウィルス感染は沈静化していきました。栄子の治療法が功を奏し、日本は平穏に戻りました。そして松岡は北海道で医師とし て働いていました。

感想

 

20220年現在進行中の新型コロナウイルスを、あたかも想定したかのようなパンデミック映画。

 

この映画の最大の特徴は、医療現場にスポットを当てたことです。疲弊した院内、院内感染・医療崩壊の様が、メチャリアルに描かれています。

一方で、想定しうる国内の混乱、封鎖、規制、食糧難などによるパニック描写にも力を入れて描き切っています。

自衛隊や警察が出動して戒厳令のような状態や国が配給した食料を並んで待つ、銀行やスーパーなどが荒らされたり、まるで巨大地震にでもあったような街の後輩ぶりなどの多少大げさな描写も驚きます。

現在全国では新型コロナウイルスの感染拡大の予防の対策として緊急事態宣言が施行中です。都内の街は「これが東京か?」と思えるほど閑散としていますが、この映画でもかなり似通った状況の描写が見られます。あながちこの映画のような描写が絵空事ではないような気もしてきます。

さらに、地球規模のパンデミックを描いた「コンテイジョン」(2011年公開)や、ウイルスを細菌兵器に転用!を扱った「アウトブレイク」(1995年公開)といったウイルス感染映画のように、ウイルスの発生の起源や、感染ルートの追跡といった描写などもある程度、説得性をもって描かれています。

ちなみに、最初は、鳥インフルエンザで発生源はフィリピン…。実はこれは誤りで、東南アジア、マングローブ島でコウモリのウイルスが原因だったことがわかります。

そのため、感染源だという偏見・誤解で、養鶏場の主が自殺をしてしまうという風評被害も描かれています。

さらにウイルス感染の事実を隠蔽するために島の住民もろとも軍が介入したというあり得そうな「アウトブレイク」や76年に公開された「カサンドラクロス」ばりのお話も盛り込まれている点が、中国やアメリカが最近兵器云々など今回でもそういうことがありえそうで、なさそうで興味を引きます。

ただ、あくまでも医師、研究者といった医療関係従事者の視点で物語は展開していきますので、「シン・ゴジラ」のような政治的視点は限られてきます。しいて言えば厚生労働省のトップの方の応対が少し出てくるにすぎません。

総体的な評価としては日本映画特有のメロドラマの要素が少しうざいです。

また、登場人物たちが医療現場ではマスクをしているのに外ではマスクを外してたり、

ウイルス発生源であるマングローブ島で島の住民たちを治療していた日本人医師がマスクもしないで日本の正月に帰省するとか、

重症の子供の患者の呼吸器を外し「もうすぐ死ぬから」といって呼吸器を次の患者にたらいまわしするとか、市区町村が大勢人を集めて炊き出しするシーンとか、

あり得んやろΣ(・□・;)みたいな突っ込めばきりがないシーンも目に付き、興をそぐ描写もあります。

そんな感じなの、でまぁ当時はあまりよい評価は少なかったように思いますが、

ある意味この「感染列島」も予言的な作品と言えるのではないでしょうか?

今、すぐ見るべき映画であることは間違いありません。